ベトナム2024年社会保険法
2025年7月1日から施行される「ベトナム2024年社会保険法」は、ベトナムにおける社会保障制度の改善と参加者の権利拡大を目指して、大幅な改正が行われている。以下に、主要な変更点とその9つである。
1. 強制社会保険の対象範囲の拡大
2024年法では、強制社会保険の対象者が大幅に拡大された。1か月以上の労働契約を持つ全従業員に加え、家庭経営者、地域のパートタイム労働者、給与を受け取らない企業経営者も対象となる。この変更により、今まで社会保険の対象外だった短期労働者やパートタイム従業員も保険に加入することが求められ、より広範な労働者層が社会保障の恩恵を受けることができる。
企業資本の代表者、役員、取締役会メンバー、給与を受け取らない監査役も対象に追加された。ただし、退職年齢を超えた者は除外される。これにより、より広範な労働者層が社会保険制度に組み込まれるようになった。
これらの対象者の月額社会保険拠出金は、病気および産休基金には給与の3%、退職および死亡基金には22%と規定されている。
2. 社会保険拠出金の計算方法の変更
従来の「基本給」(ただ実際には給与と同様の性質の手当も含めている)に代わり、新しい「参照基準」が拠出金と給付金の計算に用いられる。これにより、拠出金の計算は基本給だけでなく、給与手当や他の定期的な手当も含めて計算されるようになった。また、参照基準はインフレや経済成長に応じて調整され、経済状況に対応した柔軟な計算が可能である。
3. 社会保険の納付および給付に関する変更点
4. 社会保険手帳の初回発行期間の短縮
2024年社会保険法においては、社会保険機関が社会保険手帳を初めて発行する際の所要期間が、従来の20営業日から5営業日へと大幅に短縮された。
これは、必要書類一式を受領した日から起算して適用される。
また、所定の期間内に手帳が発行されない場合、社会保険機関は書面にて不発行の理由を明示し、回答する義務がある。
5. 高齢者向けの社会年金制度の導入
新法では、75歳以上の年金未受給者に対して社会年金給付が導入された。以前は80歳以上が対象でしたが、年齢が引き下げられたことで、より多くの高齢者が支援を受けやすくなっている。さらに、貧困世帯や準貧困世帯の70歳以上の高齢者も、早めに年金給付を受けることが可能である。
6. 義務的社会保険および失業保険の滞納・未納に対する処罰措置の具体化
2024年社会保険法では、社会保険および失業保険の滞納および未納に関する管理を強化するため、以下のとおり滞納および未納(回避)の行為を具体的に定義している。
2024年社会保険法は、納付遅延または未納(回避)に係る保険料の全額納付を義務付けており、これに加えて、遅延または未納期間および該当金額に応じて、1日あたり0.03%の割合で算定される延滞金の納付が求められる。
さらに、違反行為を行った者は、行政処分を受けるほか、未納(回避)に該当する場合には刑事責任を問われる可能性があり、あわせて、各種の競争表彰や褒賞の対象としての選定も行われない。
7. 年金受給資格の短縮
従来は20年の社会保険加入が必要だった年金受給資格が、2024年法では15年に短縮される。これにより、年齢に達したものの加入期間が不足していた労働者も年金を受け取る資格を得やすくなり、老後の生活の安定が図られる。
8. 退職時の一時金支給に関する規定の見直し
9. 一時金受給条件の明確化と一時金から年金受給へのインセンティブ強化
新法では、一時金の代わりに年金を受け取るよう奨励するインセンティブが設けられた。これにより、一時金受給条件が見直され、特定の疾病や障害がある場合に一時金を選択できるものの、基本的には長期的な年金受給が推奨されている。